イベントレポート

2024.04.08

400年地域に息づく歴史と伝統。風見神楽

「風見神楽」は、毎年4月の第一日曜日に風見地区で行われています。

江戸時代初期に始まり、栃木県の太々神楽の中でも古い歴史と伝統を誇るものの一つです。

今回は、その地域に根付いた風見神楽を奉納する様子を取材しました。

風見神楽とは

風見神楽は、塩谷町風見区の大杉神社に奉納される太々神楽です。

この神楽のはじまりは元和2年(1616年)

当初は神官によって代々継承されていましたが、大正6年(1917年)に神官から氏子に引き継がれ、今日に至っています。

明治12年(1879年)に一時中断したところ地域に流行り病が蔓延したため、明治23年(1890年)に再開したというエピソードも伝えられています。


昭和52年には、栃木県の無形民俗文化財として指定されました。

 

風見神楽 当日の様子

2024年4月の第一日曜日である7日は、暖かい風が吹く春らしい陽気でした。

ここ4年はコロナ禍で神楽の奉納を見合わせていたため、今年は「練習会」として一般公開を行いました。

午前中に風見神楽保存会の皆さんで舞台の準備を終え、昼食。献杯をします。

 

風見神楽の演目は神話を黙劇化したものがほとんどです。

総礼の舞」にはじまり「岩戸の舞」を中心とし、「大黒の舞」で終わる全36座から構成されています。

楽器は太鼓と笛のみ。

時間の都合上すべてを舞うことはできないため、いくつかの舞を奉納しました。

<第一座 総礼の舞>

神楽殿(舞台)を清める舞で、36座の舞が無事に務められますようにという祈りが込められています。

 

<第六座 往還住命(おうかんずみのみこと)の舞>

財宝を奪い人々を苦しめていた鬼神を、弓矢を持った神が退治するという舞。

 

<第二十座 岩戸の舞>

天照大神が洞窟に隠れ世間は真っ暗になってしまったため、きれいな女神が舞って興味を引き、「手力男命(たじからおのみこと)」が岩戸をこじ開けて、再び世を明るくしたという神話を元にした舞。

舞が始まってからはどんな異変が起きても、岩戸が開くまでは舞を続けなければならない決まりになっています。

 

<第二十六座 道化の舞・二十七座 大蛇の舞>

大蛇(オロチ)に樽酒を飲ませて酔わせた神話をあらわした舞。 

<第三十五座 恵比寿舞>

恵比寿の神が笹の釣り竿と鈴を持ち、鯛やタコを釣りあげて喜んでいるめでたい舞。

観覧に来ていた方と引っ張り合いました。

 

<お囃子>

演奏する太鼓や笛、そして舞にはお手本となる本や楽譜がありません。

そのため、代々口頭で伝えながら受け継がれています。

終わりに

今年は練習会のため地域へ開催の告知はしなかったそうですが、神楽が始まるとちらほらと人が訪れ、最終的には20人ほどが集まっていました。


風見神楽保存会・世話役の小嶋計一さんは、

「こんなに来てくれるなんて嬉しい。来年も家族を誘って見に来てほしい」と満足そうな笑顔を見せていました。

 

保存会の人数は高齢化により減ってきており、現在は7人。

「風見神楽」という地域に根付いた伝統を未来に継承していくためには、若い世代へ伝えていくことが不可欠です。

 

この日は祖父母や両親に連れられた子どもたちが何人か来ていました。

いつの日か、神楽殿を見上げていた彼らが風見神楽を受け継ぎ、堂々と舞う姿が見られることを願っています。

 

(2024年4月7日取材   地域おこし協力隊   小松原啓加)