- #UIJターン
- #起業・事業継承
- #農林漁業
- #地域おこし協力隊
- #若者
このまちで農家になる。新米地域おこし協力隊員の挑戦
「地域おこし協力隊」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
主に都市部から過疎地域に移住して、様々な地域協力活動を行いながら、そこでの定住・定着を図る取り組みです。
全国の各地方自治体によって隊員に任命され、任期はおおむね1~3年。
2023年現在、塩谷町では3人の地域おこし協力隊員が活動しています。
今回は、「塩谷町で農家になる」という目標を持ちながら、日々まちを盛り上げている新人隊員をご紹介します。
鈴木 雄太(すずき ゆうた)さん
1996年生まれ、東京都出身。
2023年4月に塩谷町地域おこし協力隊として着任し、有機農業の推進及びPR活動に携わる。退任後は町内で就農予定。
趣味はピアノと道の駅めぐり。
生きものの先に見えた農家への道。大学進学を機に栃木へ
塩谷町地域おこし協力隊の鈴木さんは、2023年度から塩谷町役場の産業振興課に所属して活動しています。
まちの主産業となっている農業ですが、全国で農業従事者が減少している昨今、塩谷町も例外ではありません。
そんな中、協力隊の退任後に就農を目指している鈴木さんは、近ごろ珍しい若者と言えそうです。
そもそもなぜ農家を志すようになったのか、聞いてみました。
「小さいころから生きものが好きで。
住んでいた東京の調布市は住宅地が多かったけど畑もあって、バッタやカマキリをよく捕まえていました。
そこから何となく農家になろうかなと」
今も鈴木さんは数々の生きものを自宅で飼っています。特に魚が好きだそう。
生きもの好きが高じて農業、そして農家という選択肢が自然と浮かんだ鈴木さん。
関東近辺での就農を見据えて、宇都宮大学の農学部に進学を決めます。
学部の友人にも農家になりたいという人はいませんでしたが、一人強い思いを持ち続けていました。
塩谷町でお米づくり。次のステップとして地域おこし協力隊に
鈴木さんの人生が塩谷町とつながったのは、就職活動をしていた大学3年生のときでした。
東京で就活生向けの農業フェアに参加したところ、社員募集をしていたある農業法人と出会います。それが、塩谷町で大規模な稲作栽培を行っている『株式会社和氣ふぁーむ』でした。
「将来どんな形で就農するにせよ、まずはお米を学びたかった」
フェアで話を聞き興味を持った鈴木さんは、卒業後に和氣ふぁーむへ入社し、4年間お米作りに没頭しました。
和氣ふぁーむで働きながら就農を現実的に考え始めた2022年の夏、まちの知り合いから塩谷町の地域おこし協力隊について紹介を受けます。
独立の前に新しい環境で農家になる準備を進めたいと思っていたため、地域おこし協力隊として農業に関われるのは鈴木さんにとって魅力的でした。
ただ、協力隊の任期は基本的に3年。
就農のために3年未満でやめてしまうかもしれないと、応募をためらっていたときに声をかけてくれたのは、当時地域おこし協力隊の募集を担当していた役場の職員の方でした。
「もし1年で鈴木君が地域おこし協力隊をやめたとしても、塩谷町に残ってくれれば、僕は協力隊の成功例だと思うよ」
その一言が決め手となり面接を受け、当時住んでいた矢板市から塩谷町へと移住し、地域おこし協力隊に着任しました。
協力隊で改めて感じた。“農業は楽しい”
有機農業の促進とPRが任務の鈴木さん。現在行っている活動の一つは、まちの有機実証圃場の管理とその利用です。
塩谷町は2023年4月にオーガニックビレッジ宣言をし、玉生小学校横の圃場で米と野菜、パパイヤの無農薬栽培を始めました。
鈴木さんはその圃場の管理のほか、農業を身近に感じてもらうために、子ども向けの農業体験や虫取りイベントを開催しています。
また、塩谷町の道の駅に併設されている交流センターで、アクアポニックスの展示をしています。
アクアポニックスとは、環境にやさしい栽培方法の一つで、魚の糞や食べ残しを養分に植物が育ち、植物がきれいにした水で魚が育つ仕組みです。
魚が好きで、水耕栽培師の資格ももつ鈴木さんならではの試みです。
地域おこし協力隊としての様々な活動を通して、「農業は楽しい」と改めて感じることができているといいます。
まちのために自分がやりたいと思ったことを企画し、主体的に実行できるのが協力隊の特徴の一つ。
持ち前の行動力で既に多くの人とつながり、塩谷町に新たな風を吹かせています。
人が気軽に来られる畑とまち
農業体験イベントをもとに、鈴木さんは農業での交流を目的とする“部活”を立ち上げました。今後はそのコミュニティで人を集め、様々な活動をしていく予定です。
「直売所やビオトープをみんなでつくったり、人が気軽に集まれる畑を目指したい」
自然が豊かで生きものもたくさんいる塩谷町が、町内外からもっと人が来る場所になってほしいと願っています。
また、自分の経験から、「農家になりやすいまち」であってほしいという想いも。
「農業をやりたいとなったときに、いろいろな方法があってどこに行けばいいのかわからなかった。
ここに行けば大丈夫、と就農関係を一括して管理しているところがあったらいい。
自分も今後農家になりたい人にとって相談しやすい人になれたら」
来年には就農して生計を立てる予定だという鈴木さん。
地域おこし協力隊としてまちづくりに関わりながら、「塩谷町で農家になる」という夢に向かって確実に歩みを進めています。
今後が楽しみな彼の挑戦を、ぜひInstagramで追ってみてください。
(2023年6月16日取材 地域おこし協力隊 小松原 啓加)