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「自分の武器はこれしかない」。元・コーヒー嫌いが営む、こだわりのコーヒー店
嫌いだったものが、ある日突然好きになる。
そんな経験をしたことはありませんか。
今回ご紹介する方は、町内でコーヒー店を経営するオーナー。
なんと、もともとコーヒーは嫌いだったそう。
おすすめの一杯とともに、コーヒーを生業にするまでやお店について語っていただきました。
福田 大輔(ふくだ だいすけ)さん
1982年生まれ、塩谷町出身。
五人兄弟の四男として、フォトスタジオを営む両親のもとで育つ。
2021年、道の駅 湧水の郷しおや内に「山翡翠珈琲」をオープン。
町内の和食料理店「思源」は兄が経営する姉妹店。
コーヒーの再発見。「味の理由」を追究し続け独立へ
「コーヒー、実はもともと嫌いだったんですよ」
そう笑って話すのは、「山翡翠珈琲」オーナーの福田大輔さん。
3年前から塩谷町の道の駅でコーヒー店を営んでいます。
道の駅にほど近い、船生の長峰区で福田さんは生まれ育ちました。
高校を卒業すると海上自衛隊に入隊し、その後はイタリア料理を学びに兵庫県へ。
苦手だったコーヒーのイメージが変わったのは、地元に帰ってきた2013年のことでした。
「妹の紹介で知り合った方のコーヒーを飲んで、どうして今までこんなに美味しいコーヒーに出会えなかったのだろうと思ったんです。
あの時の感動は忘れられないですね。そこからコーヒーにハマりました」
本を参考に淹れ方を研究し始め、兄の経営する和食料理店でコーヒーを出すようになった福田さん。
週末は兄の店を手伝い、平日は栃木市の自動車工場で働きながら、次第にコーヒーで独立することを考え始めます。
「このまま普通に働いていると心が折れてしまうと思って、その時に自分の武器は何かなと考えたら、コーヒーしかないと思ったんです。
だったら徹底的に勉強しようというか、コーヒーのことだけしか考えないようにしました」
淹れ方に加え、豆を焙煎するときの火力や圧力、冷却の速度など、様々な要素が複雑に絡み合ってコーヒーの味は決まります。
たとえ同じ種類の豆で同じ焙煎をしても、ロットごとに味が若干変わってきてしまうそう。
そういった、一つ一つのコーヒーが生み出す「味の理由」に気づくまでが大変だったと語ります。
「店をオープンするまでの3年間は、疑問に思ったことを徹底的に考えて、その原因を突き止めるということをただひたすら繰り返していました。
それこそ『山ごもり』みたいな(笑)
あの時の経験が今のベースになっていますし、自信にもなっています」
素材へのこだわりが詰まった「山翡翠珈琲」
2021年4月、満を持して福田さんは「道の駅 湧水の郷しおや」内に、自身の店をオープンしました。
道の駅は、かつて福田さんが通った船生中の跡地に建てられており、思い出の場所です。
「山翡翠珈琲」の店名は、町の鳥である「ヤマセミ」から名付けられました。
「コーヒーマイスター」と「焙煎士」の資格を持つ福田さんのおすすめは、やはりコーヒー。
生豆から良い豆だけを手作業で選別し、豆に合わせて焙煎しています。
ヤマセミの住む山の爽やかな清流をイメージした「ヤマセミブレンド」が看板メニューで人気だそう。
「自分のコーヒーの概念を覆した一杯がペルー産の豆だったので、ペルー産ベースのブレンドを作ってみたいと思い作りました。
飲みやすいけどコクがある、飽きの来ないコーヒーです」
和食料理人の兄からの影響で、コーヒー豆以外の食材にもこだわっている福田さん。
地元の農産物を使った地産地消に取り組み、ドリンクのシロップにはヴィーガン・ハラル認証を受けたものを使用しています。
「来てくださる方には『ここなら安心して子どもにも飲ませられる』と言っていただいています。
リピートしてくださったり、コーヒーが飲めなかった方が飲めるようになったと聞くとやっぱり嬉しいですね」
オリジナルのアレンジソフトクリームやワッフル、ホットドッグなどの軽食メニューもあり、老若男女に心地よい「休息のお供」を提供しています。
道の駅で光る。町が誇れるコーヒー店に
友人のつながりで定期的に東京や神奈川のマルシェに出店し、遠方のファンも増えてきている福田さんの山翡翠珈琲。
今後はECサイトでのコーヒー豆のネット販売や、キッチンカーでの事業拡大も視野に入れています。
とはいえ、一人では手の回りきらない部分も多いため「一緒にコーヒーをやってみたい人」を随時募集中とのこと。
「テナント店としても、道の駅に入っている限りは魅力あるお店であり続けたいです。
塩谷町のコーヒー屋さんといえばここ、県北・栃木のコーヒー屋さんと言えばここ、と言われるようになりたいですね」
町内で最も人が行き交う場所である道の駅。
その一角で日々朗らかに、そして丁寧にコーヒーを淹れる福田さんの姿がありました。
(5月13日取材 地域おこし協力隊 小松原啓加)